日本消化器内視鏡学会甲信越支部

17.十二指腸乳頭部腺腫の2症例

丸の内病院 消化器内科
山本香織、中村 直
長野市民病院 消化器科
長谷部修

十二指腸乳頭部生検にて腺腫と診断された2症例を経験した。【症例1】53歳男性。2008/7当院ドックにて上部消化管内視鏡検査(EGD)を施行した。過去3回の検査では異常所見の指摘はなかった。乳頭部全体が軽度発赤した扁平な隆起を呈しており、生検にて腺腫と診断された。造影CT、EUS、ERCP、IDUSにて明らかな浸潤の所見はなく、2008/10内視鏡的乳頭切除術を施行した。出血、膵炎などの偶発症はなく第10病日に退院した。切除標本の病理診断では、粘膜表層部に限局した腺腫であった。【症例2】77歳男性。2000/9他施設EGDにて十二指腸乳頭部隆起を指摘されERCP、2004/11に経過観察のEGDが施行されたが、いずれの生検でも腺腫成分を認めなかった。2008/11当院にてEGD施行、乳頭部隆起からの生検では異型なし。2009/2再検時の生検にて腺腫と診断された。年齢やこれまでの内視鏡所見に変化がないことから治療希望されず経過観察中である。【考察】十二指腸乳頭部腺腫は、腺腫内癌存在の可能性等も考慮し、縮小手術として内視鏡的乳頭切除術の良い適応と考える。経過観察も選択肢となるが、癌へ移行すれば大きな侵襲を伴う治療が必要となることを十分説明しておく必要がある。