日本消化器内視鏡学会甲信越支部

16.十二指腸原発高分化型胃型腺癌の1例

信州大学 医学部 消化器内科
長屋匡信、伊藤哲也、米田 傑、須藤桃子、市川真也、須藤貴森、武田龍太郎、田中榮司
信州大学附属病院内視鏡診療部
竹中一弘、赤松泰次

 症例は83歳、男性。2008年8月にスクリーニングの目的で施行した上部消化管内視鏡検査(EGD)で十二指腸球部に大きさ15mm程の粘膜下腫瘍様病変を指摘された。2ヶ月後に再検したEGDで増大傾向を認めたため、精査加療の目的で当科へ紹介された。当院で施行したEGDで腫瘍肛門側に陥凹面を認め、上皮性腫瘍の可能性も考えられた。鉗子生検では高分化型腺癌が疑われたものの、p53、Ki-67染色ともに陰性で、確定診断には至らなかった。後方斜視鏡にて再検したところ、やはり腺癌を強く疑う所見であった。超音波内視鏡ではSM以深の浸潤が疑われ、生検結果も合わせ十二指腸原発癌と診断した。2009年1月に幽門側胃切除、十二指腸部分切除を施行した。切除標本ではWell differentiated tubular adenocarcinoma, pSE, int, INF β, ly2, v0, PM(−),DM(−)であった。腫瘍の発生起源は不明であったが、免疫染色ではMUC5AC、MUC6陽性、MUC2、CD10陰性であり、胃型腺癌と考えられた。十二指腸原発の高分化型胃型腺癌の報告は少なく、本例はきわめて稀な症例と考え報告する。