日本消化器内視鏡学会甲信越支部

12.カンガルーセルジンガーPEGキットを用いた胃瘻造設において胃壁牽引に伴い脾損傷を併発した1症例

国立病院機構まつもと医療センター松本病院 外科
横井謙太、中川 幹、荒井正幸、北村 宏、小池祥一郎
国立病院機構まつもと医療センター松本病院 内科
松田賢介、松林 潔、宮林秀晴

 カンガルーセルジンガーPEGキットを用いた胃瘻造設時に脾損傷を併発し、緊急手術となった症例を経験したので報告する。患者は90歳男性。多発性骨髄腫にて2008年4月より当院内科に入院中であった。ADL低下・食欲不振のため胃瘻造設の方針となり2009年3月にカンガルーセルジンガーPEGキット(24Fr. 2.5cm)を用いた経皮内視鏡的胃瘻造設術を施行した。術直後より血圧70台と低下。Hb8.0g/dlから6.1g/dlと貧血の進行を認め、腹部CTにて腹腔内に多量の出血を指摘され同日緊急手術となった。術中所見では胃瘻周囲に出血を認めず、肝周囲・左横隔膜下に出血・凝血塊を多量に認めた。これらを除去すると脾下極に被膜損傷・出血を認めた。止血困難のため脾臓摘出術を施行。胃瘻は体下部大弯側前壁寄りに留置されており、ペグを抜去して閉鎖した後、改めてWitzel式胃瘻を造設した。脾損傷の原因は、胃瘻造設手技中の腹壁挙上に伴う胃脾間膜の牽引により脾臓被膜が裂けたものと推察された。胃瘻造設に伴う実質臓器の損傷例は報告例が少ないため、若干の文献的考察を加えて報告する。