日本消化器内視鏡学会甲信越支部

9.7年間の経時的変化が観察可能であった胃MALTリンパ腫の1例

諏訪赤十字病院 消化器内科
野沢祐一、進士明宏、武井英樹、小松健一、太田裕志、武川建二、山村伸吉、小口寿夫

 症例は49歳男性。2001年より当院で1年に1度、上部消化管内視鏡検査(以下EGD)による検診を受けていた。2008年10月のEGDで胃体下部後壁に敷石状の多発性隆起性病変を認め、生検でMALTリンパ腫と診断された。EUS、骨髄検査、Gaシンチグラフィー、CT、下部消化管内視鏡検査からLugano分類Stage1と診断しH.pylori除菌療法を施行した。約4ヶ月後には病変は消失し、組織学的にCRになった。2001年からの内視鏡画像から病変部の経時的変化をretrospectiveに検討したところ、2001年の時点で同部に萎縮粘膜を認め、2006年の時点では一部に発赤を認め、2007年には、一部隆起し、2008年の発見時点には、びらんを認めた。胃MALTリンパ腫の内視鏡所見は発赤・びらん、浮腫、敷石状、など非常に多彩である。病変の部位は小彎が84%、前庭部が42%との報告がある。2001年から2007年まで慢性胃炎と診断されていたが、慢性胃炎の内視鏡所見は、多彩な内視鏡所見を呈するMALTリンパ腫と鑑別が困難な場合があると考えられる。本例のような変化きたす病変を、特に胃角や前庭部周辺に認めた場合には、積極的に生検を施行することが、MALTリンパ腫の早期発見および治療につながると考えられる。