日本消化器内視鏡学会甲信越支部

6.胃ESD症例からみた同時多発胃癌のまとめ

下越病院 消化器科
原田 学、入月 聡、河内邦裕、大山慎一、山川良一
新潟大学大学院医歯学総合研究科 分子・診断病理学分野
味岡洋一

 症例は66歳男性。2007年9月下旬、健診の上部消化管内視鏡検査にて胃体中部後壁に15mmの発赤陥凹と3mmの発赤陥凹が認められ、生検にて高分化型腺癌と診断された。同年12月中旬にESDが施行された。ESD施行前には病変は2か所と考えられていたが、ESD施行時に胃体中部後壁に近接して3個のIIc病変が認められた。3個のIIc病変は一括で切除され、偶発症は認められず経過良好で退院した。切除径は47×36mm。病理診断は(1)Adenocarcinoma (tub2),m, ly0, v0, pLM (−), pVM (−), type 0-IIc, 7mm (2) Adenocarcinoma(tub2>por2),m, ly0, v0, pLM (−),pVM (−),type 0-IIc with Ul-IIs, 23x9 mm  (3)Adenocarcinoma (tub2),m, ly0, v0, pLM (−), pVM(−),type 0-IIc, 5mmの一括切除であった。ESD施行後10か月が経過し、再発は認められていない。早期胃癌において病変多発の頻度が高いことが明らかにされている。2007年2月〜2008年9月の期間に当院で施行されたESD全103例中21症例(20.4%)に多発胃癌が認められた。当院における多発胃癌症例についてまとめ報告する。