日本消化器内視鏡学会甲信越支部

2.下咽頭後壁から左梨状陥凹、左被裂喉頭蓋襞に側方進展した扁平上皮癌に対してESDを施行した1例

佐久総合病院胃腸科
國枝献治、小山恒男、三池 忠、北村陽子、高橋亜紀子、堀田欣一、友利彰寿、宮田佳典

 梨状陥凹底部は咽頭ESDの治療困難部位のひとつである。今回、我々は左梨状陥凹を含む下咽頭癌に対するESDのコツに関して報告する。[症例]70代、男性。食道癌にてESD施行後。経過観察のEGDにて左下咽頭および左梨状陥凹に発赤陥凹を認め、NBI拡大観察にて異常血管を認めた事から咽頭扁平上皮癌と診断した。全身麻酔下に喉頭展開したところ、病変は左梨状陥凹から左被裂喉頭蓋襞付近まで側方伸展していた。梨状陥凹底部は常に垂直方向からのアプローチとなり剥離が難しいため、まず左右から被裂喉頭蓋襞方向へ粘膜切開、剥離を行った。次に口側から全周切開を施行し、剥離を開始した。口から挿入した把持鉗子で病変を把持牽引する事で、良好なトラクションが得られ、垂直方向のアプローチとなる梨状陥凹底部分も口側および被裂喉頭蓋襞側から剥離する事ができた。喉頭浮腫による術後の窒息を予防するため、グリセオールは必要最小限とし、一回の局注量は0.5-1.0mlとした。最終診断はSCC, 上皮下進展(3700μm),ly0,v0,HM(-),VM(-),0-IIa+IIb,30x20mmであった。梨状陥凹底部から食道入口部はESD困難部位の一つだが、手技に工夫を加えることでESDによる一括切除が可能であった。