今回、我々は嚥下障害を来たし、下咽頭の壁外圧排所見が診断の契機となった頸椎前縦靱帯骨化症の一例を経験したので報告する。【症例】58歳、男性【主訴】嚥下障害【経過】毎年健診にて上部消化管内視鏡を施行されていた。平成20年5月頃より嚥下時の咽頭違和感を自覚し、徐々に悪化した。同年8月健診にて上部消化管内視鏡を施行し、下咽頭後壁に壁外性圧排を認めた。同時期より頚部の後屈制限と疼痛を認めるようになり、当院整形外科に紹介受診した。頸椎単純Xpにて第4・5・6頸椎前方に硬化像と約9mmの前方へのせり出しを認め、頸椎前縦靱帯骨化症が疑われた。咽喉頭造影では嚥下時に下咽頭に造影剤の停留を認めた。同疾患に対し、同年12月他院にて骨化巣切除術が施行された。術後、嚥下障害、内視鏡・造影所見ともに改善を認めた。【結語】前縦靱帯骨化症は稀な疾患ではあるが、嚥下障害を来たす疾患として報告例が散見されている。本症例は経時的な内視鏡所見を追うことが可能であった貴重な症例であったため報告した。嚥下障害を来たし、下咽頭後壁に壁外性圧排を認めた際は頸椎前縦靱帯骨化症を含めた整形外科的疾患も鑑別が必要であると考えられた。