日本消化器内視鏡学会甲信越支部

83.日本海裂頭条虫症の一例

下越病院 消化器科
入月 聡、原田 学、河内 邦裕、山川 良一
吉村医院
吉村 朗

 【症例】症例は67歳男性。排便時肛門より白色の平たいきしめん状のものが出てきたとの事で近医受診し、条虫症を疑われ当院を紹介され受診した。問診にて子豚の丸焼き、サケとマスの生食の摂食歴があり、日本海裂頭条虫症、有鈎条虫症が考えられた。ガストログラフィン法にて駆虫を行い、虫体の形状、虫卵検査により日本海裂頭条虫症と診断した。

【考察】日本海裂頭条虫はサケ・マスの生食により感染する。その治療は一般的には安価・簡便であり、放射線被爆がないことなどからプラジカンテルによる駆虫が第一選択である。一方、有鈎条虫は豚肉により感染し、プラジカンテルによる駆虫では虫体が融解し幼虫が全身に散布され有鈎嚢虫症を引き起こすことがあるため、ガストログラフィン法が用いられる。本症例では有鈎条虫症の可能性を否定できなかったためガストログラフィン法を用いた。