日本消化器内視鏡学会甲信越支部

84.画像の経時的変化にて術前診断し、腹腔鏡下に根治手術を施行しえた左傍十二指腸ヘルニアの一例

新潟県立十日町病院 外科
林 哲二、福成 博幸、岡島 千怜、樋上 健、設楽 兼司

 傍十二指腸ヘルニアは,Treitz靱帯周囲の腹膜窩に腸管が嵌入する比較的稀な内ヘルニアであり、術前診断は困難な場合が多い。今回,われわれは腹部単純写真およびCT検査の経時的な変化により術前診断し、腹腔鏡下に手術を施行し得た左傍十二指腸ヘルニアを経験したので報告する。症例は48歳,女性。左側腹部痛を主訴に救急外来受診し、CT検査では特に所見なく症状も軽快したため、帰宅するも、その後も間歇的な腹痛が出現し、約6週後に精査加療目的に入院となった。腹部造影CTにて,左上腹部に嚢状の拡張した腸管を認め,その腹側に下腸間膜静脈を認めた。初診時の腹部単純写真およびCT検査所見の経時的な変化から、嵌入を繰り返す左傍十二指腸ヘルニアと診断し、翌日に腹腔鏡下手術を施行した。左傍十二指腸窩(Landzert窩)に嵌入した小腸を認めたが、血流障害等は認めず、腹腔鏡下に腸管を整復し、ヘルニア門を縫合閉鎖した。イレウスの原因として傍十二指腸ヘルニアは念頭に置くべき疾患の一つであり、腹腔鏡下手術は本疾患に対する有効な治療法と考えられた。