日本消化器内視鏡学会甲信越支部

78.放射線療法が著効した直腸MALTリンパ腫の一例

諏訪赤十字病院 消化器科
山本 高照、進士 明宏、武川 建二、太田 裕志、望月 太郎、沖山 洋、山村 伸吉、小口 寿男、中村 智次
信州大学医学部付属病院 臨床検査部
石井 恵子

 要旨 症例は、33歳女性。主訴は排便時出血。2007年9月頃から排便時出血が出現。同年11月にA病院で大腸内視鏡検査を施行されたが異常を指摘されなかった。その後も症状が続くためB病院を受診し、再度直腸内視鏡検査を施行された所、直腸に顆粒状変化を認め、易出血性であった。同部からの生検でMALTリンパ腫と診断され、2008年2月当科紹介となった。各種画像診断でstage Iと診断した。また病変部のEUSでは粘膜層の肥厚のみで深部は構造が保たれていた。生検のパラフィン切片を用いて、信州大学医学部付属病院臨床検査部に免疫グロブリンの重複遺伝子の再構成の検討を依頼したが、単クローン性の増生は認めなかった。H.pylori陽性のため除菌療法を選択し、二次除菌で除菌成功したが自覚症状は変わらず、5月に再評価したところ病変部の増悪が見られた。直腸に対して30Gyの放射線治療を行い7月大腸内視鏡検査を行ったところ、病変は瘢痕化していた。限局性直腸MALTリンパ腫に対して、放射線治療は有効と考えられた。