日本消化器内視鏡学会甲信越支部

73.特異な内視鏡所見を呈したCollagenous colitisの一例

新潟大学医歯学総合研究科 消化器内科学分野
高橋 弘道、塩路 和彦、横山 純二、橋本 哲、河内 裕介、水野 研一、佐藤 祐一、小林 正明、野本 実、青柳 豊
新潟大学医歯学総合病院 光学医療診療部
成澤 林太郎
新潟大学医歯学総合研究科 分子・診断病理学分野
味岡 洋一

 症例は71歳女性。関節リウマチ、正常眼圧緑内障にて当院通院加療中であり、NSAIDs(スリンダク)を内服していた。2007年11月に出血性胃潰瘍のため当科入院し、ランソプラゾールの内服を開始した。2008年3月に腹痛、血便が出現。大腸内視鏡検査にて横行結腸からS状結腸にかけて数条の縦走潰瘍が認められた。虚血性腸炎を疑い腸管安静で経過観察したところ、症状の改善を認めた。しかし生検組織において虚血性変化は認められず、表層のcollagen bandの肥厚と粘膜固有層への炎症細胞浸潤が確認されたことからcollagenous colitisと診断した。

本症の原因としては何らかの自己免疫学的機序が考えられているが、NSAIDsやランソプラゾールなどの薬剤との関連を示す報告も多い。自験例では関節リウマチのため長期間NSAIDsを使用していたが、ランソプラゾールの服用開始後に腹痛、血便がみられたことからラベプラゾールに変更した。3ヵ月後に大腸内視鏡検査を行ったところ、縦走潰瘍はすべて瘢痕化していた。生検組織で炎症細胞浸潤は軽減し、collagen bandは薄弱化していた。プロトンポンプ阻害剤(PPI)の変更のみで内視鏡検査所見、病理所見ともに改善があったことからランソプラゾールがcollagenous colitisの発症に関与したと考えられた。

本症は一般に難治性の下痢をきたす疾患で、内視鏡上は異常所見に乏しいことから積極的な生検の施行が診断確定に必要とされている。本症例のように縦走潰瘍を呈するものはまれであり、ランソプラゾールとの関連も含め若干の文献的考察を加え報告する。