日本消化器内視鏡学会甲信越支部

71.当院における難治性潰瘍性大腸炎に対するシクロスポリンの使用経験

新潟県立中央病院 内科
本田 穣、兼藤 努、津端 俊介、平野 正明

 【背景】シクロシポリン持続静注療法はステロイド抵抗性難治性潰瘍性大腸炎に対しても緩解導入が可能な治療法として知られている。最近ではステロイド抵抗例に加え、臨床的にステロイド抵抗性が予想される広範な深掘れ潰瘍を認める症例にも積極的な投与が試みられている。【方法】2006年12月より2008年8月までに当院に潰瘍性大腸炎(UC)の再燃により入院した症例の中でステロイド抵抗性の重症例または臨床的に重症でかつ下部消化管内視鏡検査で広範な深掘れ潰瘍を認める症例を対象とし、28歳11ヶ月から56歳10ヶ月(平均: 39歳9ヶ月)までの計6症例(男:女=5:1)に投与を行った。罹病期間は2ヶ月から12年4ヶ月(平均: 5年4ヶ月)であり、6例全てが全大腸炎型であった。【成績】6例中5例が緩解となり、緩解導入率は83.3%であった。活動指数はCAIがCyA投与前 平均8.17±4.50から投与開始2週間後 2.80±1.68と改善した。CyAの投与期間は7日から23日間(平均: 14.5日間)であった。副作用として末梢神経障害を2例、肝障害を2例、頭痛を1例に認めたが、末梢神経障害、頭痛は投与量の減量により改善した。肝障害はTPN併用例に認められた。経過中、サイトメガロウイルス腸炎の合併が2例に認められ、いずれも投与開始後の感染であった。【結論】CyAはステロイド抵抗例または重症のUCに対し高い緩解導入効果を認めた。