日本消化器内視鏡学会甲信越支部

68.DBEが確定診断に有用であった回腸カルチノイドの1例

佐久総合病院 胃腸科
村井 ひかる、堀田 欣一、小山 恒男、宮田 佳典、友利 彰寿、高橋 亜紀子、北村 陽子

 【はじめに】DBEにて確定診断し、腹腔鏡下手術にて治癒切除し得た回腸カルチノイドの1例を経験したので報告する。【症例】50歳代、男性。黒色便にて前医を受診し、Hb5.2g/dlの貧血を指摘された。上下部消化管内視鏡、腹部CTにて異常所見を認めず、輸血後、経過観察されていた。5ヶ月後に黒色便を自覚し、前医を再受診し、Hb7.5g/dlの貧血を指摘された。再度施行された上下部消化管内視鏡にて出血源は不明であったため、当科を紹介受診した。再出血から38日後に経口的DBEを施行されたが、出血源は指摘されなかった。腹部造影CTにて小腸と連続する造影効果のある15mm大の腫瘤像を認め、再出血から40日後に施行した経肛門的DBEにて上部回腸に約15mm大の粘膜下腫瘍を認めた。腫瘍中心部には再生上皮を伴う瘢痕を認め、同病変が出血の責任病変と推察された。病変部より組織を採取し、マーキング目的に口側に点墨をした。生検にてカルチノイドと診断され、CT上明らかな転移は認めなかったため、腹腔鏡下回腸部分切除+リンパ節郭清術を施行した。最終病理診断は、carcinoid, 11×8mm, pT3(ss), pN1, ly2, v1, sM0, PM(-), DM(-), curative resectionであった。術後8カ月経過した現在、再発は認めていない。【考察】曽我らの報告によると、本邦における消化管カルチノイドの頻度は、直腸、胃、十二指腸、虫垂、小腸の順であり、小腸カルチノイドは稀な疾患である。Pubmedの検索では、DBEにより術前に回腸カルチノイドと確定し得た報告は3例のみであった。【結語】本症例は原因不明消化管出血の精査目的にDBEを施行し、内視鏡的にカルチノイドを疑い、腹腔鏡下切除術を念頭に置き、点墨を行った。さらに生検にて回腸カルチノイドと確定診断し、低侵襲で、根治性の高い腹腔鏡下回腸部分切除術+リンパ節郭清術を施行した。