日本消化器内視鏡学会甲信越支部

66.ダブルバルーン内視鏡(DBE)にて詳細な肉眼形態を観察できた小腸Granulocytic Sarcoma(GS)の2例

佐久総合病院 胃腸科
國枝 献治、堀田 欣一、北村 陽子、高橋 亜紀子、友利 彰寿、宮田 佳典、小山 恒男

 [症例1]50代男性。嘔吐、上腹部痛の増悪にて当科受診。上腹部に圧痛を認めた。腹部X線にてniveauを認めイレウスと診断した。CT,MRIにて右上腹部に造影効果を認める40x35mm大の腫瘤性病変を認めた。経口的DBEにて著変なく、経肛門的DBEにて下部回腸に半周性の壁肥厚および内腔の狭搾を認めた。病変部の絨毛に腫大、大小不同を認め、悪性リンパ腫を疑った。生検でも異型リンパ球の増生および単核性好酸球の混在を認め、B細胞性悪性リンパ腫と診断された。イレウス解除目的に当院外科にて小腸切除+リンパ節郭清術を施行。免疫染色にてLCA(+),CD3(-),CD20(-)でありGSと確定診断した。[症例2]50代男性。嘔吐を主訴に当科受診。左上腹部に圧痛を認め、CTにてトライツ靭帯近傍の空腸に造影効果を認める50mm大の腫瘤性病変、その口側の小腸の拡張を認め、イレウスと診断した。経口的DBEにて上部空腸に全周性の凹凸不整な壁肥厚および内腔の狭窄を認め、病変部に絨毛の腫大、大小不同を認めた。生検にてN/C比が高い類円形細胞や顆粒を有する細胞を認め、CD3,CD5,CD20陰性であることからGSが疑われた。イレウス解除および確定診断目的に当院外科にて小腸切除+リンパ節郭清術を施行。免疫染色にてLCA(+),MT-1(+)であり、GSと確定診断した。[考察]小腸原発のGSは極めて稀な疾患で、過去に内視鏡下の観察を行った報告はない。今回、我々は術前DBEを行い、外科的切除後、確定診断し得たGS症例を2例経験した。GSは幼若な骨髄球系細胞が髄外で増殖する腫瘍性疾患である。皮膚、骨、リンパ節、生殖器などに好発し、小腸原発例の割合は約10%と報告されている。経過中に急性骨髄性白血病に進展する可能性が高く、全身化学療法が長期生存に寄与すると考えられいる。自験例の2例では全身化学療法が施行され、無増悪生存中である。