日本消化器内視鏡学会甲信越支部

65.腸重積を繰り返し、外科切除を行った回腸原発悪性リンパ腫の1例

新潟県立新発田病院 内科
田中 由佳里、本間 照、松澤 純、夏井 正明、早川 雅人、姉崎 一弥、杉山 幹也、渡辺 雅史
新潟大学 分子・診断病理学分野
味岡 洋一、岩永 明人

 症例は20歳代、女性。3ヶ月前から、数日で自然軽快する腹痛が出現した。近医にて右下腹部に圧痛を伴う手拳大、弾性軟の腫瘤を指摘され、CTで回腸の上行結腸内への重積と診断され当科紹介となった。当科初診時腹痛は消失しており、右下腹部に軽度圧痛を認めるのみであった。通常の前処置でCFを行った。発赤した約4cm大のポリープを上行結腸に認めた。表面は発赤浮腫状に腫大した絨毛構造を示し、一部に不整形のびらんを伴っていた。管腔閉塞はなくscopeは終末回腸へ抵抗なく挿入可能であった。ポリープ茎部の表面も絨毛状で、回盲弁を越え基部は終末回腸へ連続していた。生検にてmalignant lymphomaと診断された。CFの4日後右側腹部痛を訴え救急外来受診、CTにてポリープ頭部が横行結腸まで先進していた。Ba注腸にて重積を解除した。しかしその後Ga-scinti撮影のため下剤内服したところ、ポリープは再び横行結腸へ先進し、今度は空気注腸にて重積解除した。化学療法の適応と考えられたが、1週間で2回重積を繰り返したため準緊急で腹腔鏡下に回盲部切除、D2廓清術を施行した。切除標本の病理診断はび慢性大細胞型B細胞性リンパ腫であった。その後血液内科にてR-CHOP療法を行っている。近年、終末回腸の悪性リンパ腫により盲腸から上行結腸に腸重積を来した症例の報告が蓄積されつつある。本症例ではポリープ先進部が横行結腸まで達していたが、空気注腸による重積解除が症状の一時的緩和に有用であった。成人発症の回腸−結腸腸重積では悪性リンパ腫による可能性を考える必要がある。