日本消化器内視鏡学会甲信越支部

59.異常血管の認識が困難であった空腸出血性angiodysplasiaの1例

佐久総合病院 胃腸科
堀田 欣一、吉田 晃、小山 恒男、宮田 佳典、友利 彰寿、高橋 亜紀子、北村 陽子

 【症例】患者:45歳、男性。主訴:下血、労作時呼吸困難。既往歴:糖尿病性腎症、心筋梗塞、抗血小板薬内服中。現病歴:1週間前から下血が持続し、労作時呼吸困難を伴ったために、当院救急外来を受診し入院となった。ヘモグロビン値4.2g/dlと高度貧血を認めた。第1病日に緊急上部消化管内視鏡および大腸内視鏡を施行したが、出血源は不明であった。その後も下血は持続し、4日間で計16単位の赤血球濃厚液を輸血したが、第4病日のヘモグロビン値は6.3g/dlであった。同日、経口的アプローチにてダブルバルーン内視鏡(DBE)を施行した。上部空腸に新鮮血の貯留を認めたため、洗浄を繰り返したところ、一見、正常な小腸粘膜面からの湧出性出血を認めた。水浸下で詳細に観察したが、出血部位の周囲には異常血管を確認できなかった。その他の部位についても洗浄したが、出血点は1カ所のみであった。同部位にエピネフリン添加高張食塩水を局注後、アルゴンプラズマ凝固を施行した。わずかな出血が持続したためにさらにclippingを行い、完全止血が得られた。以後、再出血はなく、第7病日から経口摂取を開始し、第12病日に軽快退院となった。【考察】小腸血管性病変は原因不明消化管出血の主要な原因疾患のひとつと考えられているが、血管病変には様々なvariationが存在し、診断を困難にする一因となっている。Yano、 Yamamotoらは小腸血管性病変を6つのcategoryに分類 (Gastrointest Endosc 2008)した。本症例はType1a(punctulate erythema((<1mm)、with or without oozing)に該当すると考えられたが、実際erythemaの認識さえ困難な粘膜面から、湧出性出血をきたしており、自然止血した場合には発見が困難と予測された。出血後早期のDBEが、確定診断、内視鏡的止血術のために重要であった。