日本消化器内視鏡学会甲信越支部

58.当科における非腫瘍性成人腸重積5例の検討

新潟県立十日町病院 外科
岡島 千怜、福成 博幸、松永 浩子、樋上 健、設楽 兼司、林 哲二
山口医院
山口 孝太郎

 【症例】症例1は57歳女性。小腸脂肪腫が先進部となった腸重積に対して、小腸部分切除・Albert-Lembert端々吻合術を施行。術後、吻合部が先進部となって上行結腸へ嵌入した腸重積により、右半結腸切除術を行った。症例2は40歳女性。右下腹部痛を主訴に腹部CT検査で上行結腸腸重積と診断し、高圧浣腸にて整復。その後も右下腹部痛が持続し、下部消化管内視鏡検査でアニサキス虫体を認めた。内視鏡的に虫体摘除後、症状は改善。アニサキス穿入による炎症反応によって肥厚した結腸が先進部となった腸重積であった。症例3は77歳男性。S状結腸癌、前方切除術後に発症した癒着性腸閉塞に対して、イレウス管を留置。イレウス管による減圧は良好で、抜去後食事を再開したが、再び嘔吐した。透視下上部消化管内視鏡検査、腹部CT検査でTreitz靱帯近傍の空腸による腸重積と診断。小腸切除術を行った。症例4は87歳女性、脳梗塞後ワーファリン治療中に嘔吐で発症。症状出現直前のPT-INR 17.2 と著明に延長していた。腹部CT検査では腸閉塞と判断し、イレウス管挿入するも、腸重積が疑われ、開腹手術施行。術中、空腸の腸重積を認め、小腸切除術を施行。その肛門側の小腸には壁内血腫が多発していた。切除標本では先進部にも小腸の壁内血腫を認めた。症例5は75歳男性。胃癌・胃全摘後、腸閉塞にてイレウス管留置。減圧良好で、イレウス管抜去し、食事開始したが、腸閉塞を再発。腹部CT検査で腸重積が疑われ、開腹小腸切除術を施行した。【結語】非腫瘍性に発症した腸閉塞5例について検討した。イレウス管留置後に発症した腸重積はいずれも約2週間程度の長期間留置が要因と考えられ、腸閉塞改善後は早急に抜去すべきである。また腫瘍以外でも血腫や炎症による腸管の部分的壁肥厚が先進部となって腸重積を生じる可能性があることを念頭に置く必要がある。