日本消化器内視鏡学会甲信越支部

55.間質性肺炎の経過中に発症した大腸気腫性嚢腫症、ループス腸炎の1例

山梨県立中央病院 消化器内科
梶山 明日香、吉田 貴史、小嶋 裕一郎、小林 美有貴、辰巳 明久、細田 健司、鈴木 洋司、廣瀬 雄一、望月 仁
山梨県立中央病院 呼吸器内科
深澤 一裕
山梨県立中央病院 膠原病内科
永井 立夫
山梨県立中央病院 病理
小山 敏雄
市立甲府病院 消化器内科
俵 章夫

 症例は44歳男性。2006年10月頃より咳と爪周囲の皮膚症状を認めた。2008年3月間質性肺炎と診断され某院入院、ステロイドパルス療法後にプレドニゾロン(PSL 50mg)内服開始し呼吸器症状は改善した。自己抗体は陰性であった。その後PSL 35 mgに漸減した5月下旬より発熱、嘔気、嘔吐、水様性下痢が出現し、絶食にて一時的に上腹部膨満感、発熱は改善するが経口摂取を再開すると症状が増悪した。上部消化管内視鏡検査では十二指腸に出血を伴うびらん、発赤を認め、CTでは十二指腸下行脚から近位側の食物残渣貯留所見を認めた。また血清アルブミン値1.6 g/dlと著明な低栄養状態を呈していた。精査加療目的にて6月下旬に当院転院となった。経口摂取不良のためPSL 30mgの点滴静注を継続しIVH管理とした。腹部単純レントゲン写真およびCT検査で大腸気腫性嚢腫症(PCI)を認めたため、酸素療法を開始しPCIは消失し腹部膨満感は軽度改善したが、経口摂取は不良であった。小腸造影検査で空腸に拡張不良な部位を認めたため、経口および経肛門的アプローチでシングルバルーン小腸内視鏡検査を実施、Treiz靭帯より遠位側に連続性に縦走傾向のある潰瘍性病変を認め介在粘膜は発赤調を呈していた。空腸優位に病変は存在した。その後メサラジンの内服を開始し炎症反応、腹部症状は改善し、経口摂取開始後も症状の増悪は無く低栄養状態も改善した。小腸内視鏡検査でも小腸病変は著明に改善していた。当院転院時の心エコー検査で心嚢液の貯留を認め、自己抗体の再検でdsDNA陽性であったため膠原病内科受診、SLEの診断となり、小腸病変の原因はループス腸炎と考えられた。以上、間質性肺炎のPSL漸減中に蛋白漏出性胃腸症で発症し、大腸にPCIを合併し診断に苦慮した小腸病変を呈したループス腸炎を経験したので、文献的考察を加え報告する。