日本消化器内視鏡学会甲信越支部

49.肝腫瘍を疑われたAdrenal hepatic fusionの一例

小諸厚生総合病院 内科
浜内 諭、原田 卓志
小諸厚生総合病院 外科
橋本 晋一
小諸厚生総合病院 胃腸科
臼井 健二
小諸厚生総合病院 放射線科
丸山 雄一郎
小諸厚生総合病院 診療放射線科
酒井 博
信州大学医学部 放射線科
黒住 昌弘、大彌 歩

 症例は56歳女性で、平成20年2月に人間ドック時に施行された腹部USで、肝臓S7に15mm大の境界明瞭、辺縁整な低エコー腫瘤が認められた。当院で施行された造影CTでは、肝臓S7の被膜直下に、境界明瞭で辺縁平滑な15mm大の低吸収腫瘤が認められた。腫瘤は動脈相で周囲肝実質よりも濃染し、門脈相以降では周囲肝実質よりも低吸収となった。MRIでは、腫瘤は周囲肝実質と比較してT1強調でやや低信号、T2強調で等信号を呈していた。またout of phaseで、腫瘤部は低信号を呈しており、脂肪を含有していると考えられた。造影MRIでは、CT同様の造影パターンであった。ソナゾイド使用による造影USでは、動脈相早期に腫瘤全体が濃染し、約20秒後には腫瘤全体が造影欠損となった。以上の画像所見よりHCCを疑ったが、肝炎ウイルス感染無く、肝硬変像も認めないため、更なる精査を行うために、信州大学病院に紹介となった。大学で施行されたUSで、腫瘤と右副腎との間に連続性が疑われ、CTのMPR像において、右副腎動脈の分枝が腫瘤内に同定されたことから、腫瘤は副腎由来と考えられた。デキサメサゾン投与後のアドステロール副腎皮質シンチグラフィを施行したところ、右副腎に強い集積が認められたことから、副腎腺腫を疑った。本症例は、腫瘤と右副腎に連続性があり、腫瘤内に副腎動脈の分枝が走行していたことから、Adrenal hepatic fusionと診断された。肝右葉後区域における肝腫瘍の鑑別診断の一つとして、副腎由来の病変も考慮する必要があると考えられた。