日本消化器内視鏡学会甲信越支部

48.複数回治療後の再発性肝細胞癌の局所療法に造影超音波が有用であった一例

信州大学 医学部付属病院 消化器内科
米田 傑、上條 敦、城下 智、小松 通治、梅村 武司、一條 哲也、松本 昌博、吉沢 要、田中 栄司

 症例は68歳、女性。B型肝硬変にて治療中、2004年12月に肝細胞癌(HCC)を初発し、肝切除術を施行。その後再発を認めたため2005年〜2007年にかけて計3回の肝動脈塞栓術(TAE)を施行した。2008年5月にCT上S4領域に径20mm大の再発病変を認めたため、4回目のTAEを予定したが、血管造影では病変部にAPシャントの形成を認めTAEを断念した。同年5月21日局所療法が可能かの判断および治療目的に当院紹介となる。当院で施行した造影MRIでは、肝S4領域に複数の腫瘤性病変を認めたが、TAE治療後の結節とviableなHCCの結節が混在している所見であった。超音波検査では、Bモードでの観察でS4領域に多発する低エコー領域を認め、TAEによる治療後の変化か再発病変かの鑑別は困難であった。ソナゾイドTM造影超音波を追加したところ、多発する低エコー領域の一部に明らかに造影早期で濃染しKupffer相で低エコーを示すHCCに合致する病変を認め、病変の質的診断が可能となり局所療法が可能と考えられた。治療は、胆管炎の既往があること、病変部が門脈に近いことなどからラジオ波焼灼療法(RFA)は非適応と判断し、エタノール局注療法(PEIT)を施行した。PEIT施行後2日目の評価の造影超音波ではPEIT施行部位の辺縁部にHCCの残存を疑う領域を認めたため追加のPEITを施行し、その後の造影超音波では病変部が完全に消失したことが確認された。超音波Bモードでの観察で、複数回治療後の変化と再発病変との鑑別が困難なHCC症例では、造影超音波を追加することで、より正確な病変部の同定が可能であり、効果的な治療が可能であった。さらに、造影超音波検査は治療後の効果判定にも有用であった。