日本消化器内視鏡学会甲信越支部

47.メトロニダゾールの静脈内投与が奏功したDIC及び腸閉塞併発アメーバ性肝膿瘍の1例

新潟市民病院 消化器科
濱 勇、五十嵐 健太郎、河久 順志、横尾 健、相場 恒男、米山 靖、和栗 暢生、古川 浩一、杉村 一仁、月岡 恵

 症例は43歳、男性。主訴は発熱、全身倦怠感。腹部CT検査にて肝右葉に単発の低吸収域を認め、肝膿瘍が疑われたため前医にてスルバクタム・セフォペラゾン2g/日が開始された。しかし、症状の改善なく、DICを合併したため、当院へ転院となった。同日、経皮経肝膿瘍ドレナージ(以下PTAD)を施行した。穿刺液の細菌培養は陰性、細胞診では当初、赤痢アメーバ栄養体は指摘されなかった。再検にてアメーバ栄養体の存在が疑われたため、メトロニダゾールの内服(1000mg/日)を開始した。後日の赤痢アメーバ抗体は800倍と陽性を示し、アメーバ性肝膿瘍と診断した。内服を開始するも腸閉塞を合併し、内服では効果不十分と考えられメトロニダゾールの静脈内投与での治療を検討した。メトロニダゾール注射製剤は「熱帯病・寄生虫症に対する稀少疾病治療薬の輸入・保管・治療体制の開発研究」斑保管薬剤であり、東京大学医科学研究所付属病院の御協力により入手した。メトロニダゾール静脈内投与(1500mg/日)に変更したところ、発熱やDICの改善を認めた。現在、膿瘍は縮小傾向にあり、症状なく外来経過観察中である。通常はメトロニダゾールの経口製剤の腸管吸収は良好であり、注射製剤の必要はないが、本症例のようにDICを合併した重症例や吸収不良例に対しては静脈内投与が有効であると考えられここに報告する。