日本消化器内視鏡学会甲信越支部

46.潰瘍性大腸炎の治療中に発症した薬剤性過敏症症候群の1例

山梨県立中央病院 消化器内科
東福 有佳里、小林 美有貴、小嶋 裕一郎、吉田 貴史、辰巳 明久、細田 健司、鈴木 洋司、廣瀬 雄一、望月 仁
山梨県立中央病院 皮膚科
長田 厚、塚本 克彦
山梨県立中央病院 病理
小山 敏雄

  薬剤性過敏症症候群(DIHS)は、限られた薬剤投与により、発熱、白血球増多、リンパ節腫脹、肝機能障害などの全身症状を伴い、汎発性紅斑を生じる重症型薬疹である。原因薬剤を中止しても症状は悪化、遷延することが特徴で、様々な潜伏ウィルス、特にヒトヘルペスウィルス6(HHV-6)の再活性化の関与が示唆されている。潰瘍性大腸炎(UC)治療中に発症したDIHSを経験したので報告する。

 症例は29歳男性。2008年3月18日、近医でUCと診断され、メサラジン(5-ASA)を投与された。血便が改善しないため、4月10日当院紹介、サラゾスルファピリジン(SASP)に変更した。2週間後より微熱、咽頭痛を認め、市販の感冒薬を内服した。さらに3日後、肝胆道系酵素の上昇および全身掻痒感を伴う紅斑を認め、SASPによる薬疹、肝機能障害と考え、5-ASAへ変更した。薬剤変更10日後(第1病日)より、発熱、皮疹の増悪、頚部リンパ節腫脹、肝胆道系酵素上昇、異型リンパ球の出現を認めたため入院となった。DIHSを疑い、内服薬を全て中止し、第2病日よりプレドニゾロン(PSL) 40 mg/日を投与した。一時症状は軽快したが、第9病日より再び発熱、肝胆道系酵素の上昇を認めたため、ステロイドパルス療法を施行し、PSL 60 mg/日より開始、漸減した。PSL 2.5mg/日内服中の第68病日より、肝胆道系酵素の再上昇を認め、再びステロイドパルス療法(2,3回目)を施行した。PSL 60mg/日より漸減中であるが、現在再燃は認めていない。再燃時、出現することが多い発熱や皮疹は認めなかった。経過中HHV-6の再活性化を認め、DIHSと診断した。薬剤添加リンパ球刺激試験(DLST)では、5-ASA陽性、SASP、感冒薬陰性であった。

 DIHSは免疫に関連した作用を持つ特定された薬剤で引き起こされ、SASPは原因薬剤とされているが、5-ASAは原因薬剤とされていない。本例のDLSTは、5ASA陽性、SASP陰性であったが、本症に特徴的な同時期に使用した薬剤に対して反応を認め原因薬剤には反応しにくい多剤感作と考えられ、DLSTの結果から5ASAが原因薬剤とは断定できない。以上、5ASAよりSASPに投与変更後に発症しその後皮疹を伴わずに再燃したDIHSを経験したので、文献的考察を加えて報告する。