日本消化器内視鏡学会甲信越支部

45.非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)診断における脂肪負荷食の有用性

独立行政法人 労働者健康福祉機構 新潟労災病院 消化器内科
麻植ホルム 正之、前川 智、森 健次、太幡 敬洋、合志 聡
産業医科大学 消化器、代謝内科
日浦 政明
新潟大学医歯学総合病院 第3内科
野本 実

 目的 内臓脂肪蓄積におけるインスリン抵抗性を基盤とするメタボリックシンドロームの増加が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の原因の一つと考えられている。空腹時の高脂血症のみならず、食後の高中性脂肪血症が内臓脂肪蓄積に関与しているとされる。当院で肝生検し得た非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)症例に対し、高脂肪食負荷を行ない、食後中性脂肪の推移を検討した。方法 腹部超音波検査を施行し脂肪肝と診断後、肝生検を施行しNAFLDと診断し得た 59例に高脂肪食を負荷した。脂肪負荷食は、総脂肪量を40g/m2とした。負荷前、負荷後2,4,6時間目で血清中性脂肪値、血糖値、血清インスリン値を検討した。結果 患者背景は、年齢26−80歳(平均52.2歳)、男性 35例、女性 24例、単純脂肪肝 12例、NASH 47例であった。単純脂肪肝群、NASH群に分けて、脂肪負荷食後の中性脂肪値、血糖値、インスリン値を評価した。脂質代謝に関し、負荷後4時間の中性脂肪値はNASH群 323.8±185.3mg/dl 、単純脂肪肝群 は245±99.7 mg/dl(p=0.038, unpaired t-test)で、NASH群が有意に高値を認めた。糖代謝の変化については、負荷前の血糖値 / インスリン値 / HOMA-Rは、それぞれ、NASH群で有意に高値であったがNASH群に糖尿病の症例を多く認めたためと考えられた。 考察  単純脂肪肝とNASHを比較すると、NASHで有意に食後の高中性脂肪血症を認めた。食後高脂血症の反応には個体差があることが知られており、肥満、耐糖能障害、高齢者、アポ蛋白E2を有する人などとされている。食後の高中性脂肪血症の検討を行なうことがNASH診断のスクリーニングに有用であることが示唆された。