日本消化器内視鏡学会甲信越支部

44.インターフェロン治療無効で肝不全に進展し、肝移植後長期生存中のC型肝炎に合併した胆管細胞癌の1例

宜保消化器科内科クリニック
宜保 行雄
松波総合病院外科
松波 英寿
国立病院機構まつもと医療センター松本病院内科
古田 清

 はじめに:胆管細胞癌(CCC)は肝細胞癌(HCC)に比較し、肝移植後早期に再発しその予後は不良で、長期生存例の報告は少ない。今回我々は移植前HCCと診断され、脳死肝移植後8年生存中の興味ある経過のC型慢性肝炎合併CCCの1例を報告する。 症例:56歳、男性。会社員。HCV-RNA 4.7Meq1b.1968年副鼻腔炎の手術時、フィブリノーゲン製剤投与後C型急性肝炎発症した。1992年βIFNとα2aIFNにて治療するも無効。1995年βIFNとα2aIFNにて再治療中黄疸が出現し治療中止し再度無効であった。2000年9月黄疸、腹水、肝性脳症、肝腫瘍を併発した。画像診断はHCCでAFP 6.0、PIVKA-2 12,CEA2.5、CA19-9 12であった。ヒト成長ホルモン(HGH)投与し、総ビリルビン23mgより3mgに低下、脳症も改善したため渡豪し、2001年1月やはりHCCの診断のもとに脳死肝移植を行った。しかし摘出肝腫瘍組織診断はCCCであった。帰国後C型肝炎が再発したため、α2bIFN投与するもNRでnaturalαIFN少量投与に切り替えた。肝機能は改善したがHCV−RNAは陽性のままであった。2004年Peg-IFNα2aにて治療しSVRとなった。2005年突然胸水が出現したが、胸腔鏡下に精査および胸膜生検行うも転移や中皮腫(アスベスト暴露暦あり)なく5ケ月後自然消失した。CCCの再発予防のため、年1〜2回のファルモルビシンのTAI治療を行っている。 C型慢性肝炎に合併したCCCの長期生存例を報告した。移植前の肝不全にはHGHが有効であった。移植後再発したC型慢性肝炎は5回目に投与したPeg-IFNα2aにてSVRを達成出来た。経過中、原因不明の胸水が出現したが癌の転移、中皮腫は否定された。無再発生存の理由がTAIが有効と考えられ今後も継続して治療する予定である。研究協力者:プリンセスアレキサンドラ病院外科Stephen Lynch松波総合病院移植コーディネーター夏目裕代