日本消化器内視鏡学会甲信越支部

42.超低用量IFN長期投与により著効となったC型肝硬変の1例

新潟市民病院 消化器科
和栗 暢生、古川 浩一、河久 順志、濱 勇、横尾 健、米山 靖、相場 恒男、古川 浩一、杉村 一仁、五十嵐 健太郎、月岡 恵

 症例は40代の女性。25歳時、吐血(びらん性胃炎)にて某病院入院。血小板 0.6万/mlと著明低値で、骨髄所見、PAIgG高値から特発性血小板減少性紫斑病と診断され、血小板輸血、ステロイド治療、γ-globulin大量療法などが施行されたが、あまり効果がなく、血小板は2〜5万で推移した。不妊症に対してダナゾール治療を行い妊娠成立して、血小板輸血を行い出産。その後、肝機能異常を指摘され、1992年にHCV抗体陽性が確認された。2002年からは近医にてSNMC 60ml x 3/W施行していたがALT 100~200 IU/Lで推移。2004年12月AFP 165.2ng/mlと高値で肝癌を疑われて当科紹介入院。MRI, Angio-CTなどが行われ肝癌は否定された。血小板低値にてIFN治療適応外であったが、SNMC不応性の活動性肝硬変(HCV-RNA genotype 1b, 212 KIU/ml)にて部分脾動脈塞栓術を施行してIFN治療することとした。塞栓率は46%に留まり、血小板は最高値7.8万にしか上昇せず、PEG-IFN α2bとRBV併用療法ではすぐに中止基準に陥ってしまった。完全著効から肝発癌抑制に目標を移し、nIFN α 3MU x 1/Wの超少量長期投与を開始した。投与半年でHCV-RNA陰性化し、その後2年の投与を継続し、陰性化を維持して投与終了とした。その後1年再燃なく、完全著効と診断した。1b 高ウイルス量のIFN難治群と予想される本症例が、通常使用量の1/6の使用量の単独治療のも関わらず、計2年半の投与でウイルス学的治癒に至った稀な症例というだけでなく、IFN治療によりAFP値の著明な改善をみ、血小板数も10万と改善したことは、肝発癌抑止という点からも極めて貴重な経過の症例と考えられた。投与前後の肝組織所見の検討とともに報告する。