日本消化器内視鏡学会甲信越支部

41.B型肝炎関連肝細胞癌治療後の抗ウイルス療法施行の1例

済生会新潟第二病院 消化器科
石川 達、今井 径卓、樋口 和男、渡辺 孝治、関 慶一、太田 宏信、吉田 俊明、上村 朝輝

 【緒言】 経口の抗ウイルス剤であるEntecavirはB型肝炎ウイルスに対し、強力な増殖抑制効果をもっている。B型慢性肝炎例に本剤を投与すると、血中のHBV-DNA、HBe抗原量の減少や陰性化がみられるとともにTransaminase値異常の改善や正常化をもたらすことが知られている。一方、C型肝炎関連肝細胞癌治療後のInterferon投与による再発抑制の報告は散見されているもののB型肝炎関連肝細胞癌治療後の抗ウイルス療法としてのEntecavir投与の再発抑制やその有効性への検討は明らかとはなっていない。今回、われわれはB型肝炎関連肝細胞癌治療後にEntecavirを投与している症例を経験し、その問題点を含め、検討したので報告する。【症例】47歳男性. 【現病歴】出生時よりHBVキャリアであった。2005年12月腹痛にて当院受診。この際、腹部超音波検査にて左葉にlow & high echoic noduleを指摘された。その後、当科経過観察。2006年1月CTにてS7に2cm LDAを指摘されたが、肝細胞癌とは確定できず、経過観察されていた。同年8月 CTにてS7 LDAが増大傾向を認め、肝細胞癌疑いにて精査目的で入院。【経過】入院後、TACE, RFAにて加療。再発予防および肝機能改善目的にEntecavir開始。治療開始後23ヵ月後の現在肝癌再発は認めず、HBV-DNAは測定感度以下となるものの組織学的改善、肝機能の改善にやや乏しい状態である。【考察】B型関連肝細胞癌治療後の抗ウイルス療法により、肝予備能の改善を認める症例では、肝癌の再発に対する治療の選択肢が拡がる可能性がある。しかし抗ウイルス剤投与による肝機能の改善には6ヶ月以上要することが多く、改善が乏しい場合には肝細胞癌の再発が急速に増悪した症例も認め、その投与の時期を含めた今後の検討が必要である。