日本消化器内視鏡学会甲信越支部

40.ERCPにおけるファーター乳頭正面視困難例に対する工夫

独立行政法人 労働者健康福祉機構 新潟労災病院 内視鏡診療センター
前川 智、麻植 正之、森 健次、太幡 敬洋、合志 聡

 【目的】内視鏡的逆行性膵胆管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)は検査・治療手技としては難易度が高く、急性膵炎等の合併症の危険も高いことから、ERCP困難例に対する対処は恒久的な課題である。ERCP困難例の理由について熟慮したところ、あらゆる内視鏡検査・治療において基本となる目標物(側視鏡の場合はファーター乳頭)の正面視が、側視鏡においては困難なことが多いのが大きな一因となっていると考えた。ファーター乳頭正面視が困難な理由として、(1)近傍の憩室の存在、胃切除後等で十二指腸に変形がある、(2)解剖学的にファーター乳頭が十二指腸深部にあり、画面上ファーター乳頭が肛門側に傾いている、(3)蠕動運動が激しい等の理由が考えられる。そこで、当センターでは、2008年3月より既存の直視鏡用の透明フードに切り込みを入れる等加工し、側視鏡にフードをかぶせることで、レンズの口側が帽子の翼のように突出した形態のフードを作成し(以下側視鏡用フード)、ファーター乳頭正面視が困難な症例に対し使用した。【方法】ファーター乳頭正面視困難例に対し、側視鏡用フードをかぶせ、側視鏡のアップアングルでファーター乳頭を圧迫することで、ファーター乳頭の正面視を可能にし、胆管・膵管へのカニュレーションを容易にした。【成績】ファーター乳頭正面視が困難なため、ERCPが施行できなかった3症例(1症例は胃切除後、他の2症例はファーター近傍に憩室あり)に対し、側視鏡用フードを用いることで、胆管・膵管へのカニュレーションを可能にした。なお、咽頭損傷等のフードに伴う合併症は認めなかった。【結論】側視鏡用フードはERCP困難例に有用と思われ、ブラインド操作を少なくするため、合併症の軽減につながると思われた。