日本消化器内視鏡学会甲信越支部

37.胆管癌と鑑別を要し、細経内視鏡を用いた経口直接胆道鏡による診断・治療が有用であった鋳型状胆管結石の一例

新潟大学 大学院 医歯学総合研究科 消化器内科学分野
五十嵐 聡、塩路 和彦、有賀 諭生、窪田 智之、川合 弘一、鈴木 健司、青柳 豊
新潟大学 医歯学総合病院 光学医療診療部
成澤 林太郎

  症例は70歳代、男性。約50年前に胃潰瘍にて幽門側胃切除術(Billroth-II法再建)を受けている。平成13年より前医でC型慢性肝炎にて経過観察されており、平成18年肝細胞癌に対しS5部分切除術が施行。平成19年11月肝細胞癌再発に対しTACE、RFA、PEITが施行されている。 平成20年5月 肝胆道系酵素上昇を認め、CTにて総胆管の狭窄と肝内胆管の軽度拡張をMRCPにて胆管癌も疑われたため、精査目的に当科紹介となった。現症では黄疸と上腹部に圧痛を、血液検査では炎症反応,肝胆道系酵素、腫瘍マーカーの上昇を認めた。 Billroth-II法再建術後のためERCPは前方斜視鏡(XK240)を用いて行った。ERCにて総胆管の狭窄を認め、IDUSでは胆管内に充満する隆起成分を認めた。ENBDを挿入し、繰り返し胆汁細胞診を行ったが悪性所見は得られず、胆管生検でも炎症所見のみであった。ソナゾイドによる造影USでは総胆管内の隆起部に血流シグナルを認めなかった。 画像所見からは胆管癌を否定できず診断確定のために、細経内視鏡を用いた経口直接胆道鏡を施行した。シングルバルーン小腸内視鏡で用いるスライディングチューブ(ST-SB1)を乳頭近傍の輸入脚に固定。次に細経内視鏡(XP260N)をスライディングチューブの側穴から挿入し胆管内を観察した。胆管内には軽度の粘膜粗造はあるものの腫瘍を疑う変化を認めず。総肝管から左肝管内には黒色構造物あり、生検鉗子で除去可能であった。回収した構造物は胆管内に鋳型状に形成された結石と考えられ、結石分析ではビリルビンCaであった。 血液検査、画像所見からは胆管癌が否定できず、細経内視鏡を用いた経口直接胆道鏡が診断・治療に有用であった鋳型状胆管結石の症例を経験したので報告する。