日本消化器内視鏡学会甲信越支部

36.総胆管結石に対して経胃瘻的内視鏡(Transgastrostomic endoscopy;TGE)にて内視鏡的砕石術を行った2例

独立行政法人 労働者健康福祉機構 新潟労災病院 内視鏡診療センター
合志 聡、麻植 ホルム正之、前川 智、森 健次、太幡 敬洋

 【背景】胃瘻は栄養注入のみならず、同部位より内視鏡挿入を行うことで胃瘻栄養対象者のようなハイリスク群にも上部消化管内視鏡検査が容易に行える利便性がある。最近は通常の観察のみならず、PEG-J挿入、ESD、十二指腸ステント留置の補助のための治療内視鏡としての報告も散見される。今回、経胃瘻的内視鏡(Transgastrostomic endoscopy;TGE)にて総胆管結石の内視鏡的砕石術を行った2例を経験したので報告する。【症例1】60歳代、女性。主訴は発熱。脳梗塞にて7年前に経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)施行、24Frのボタンバンパータイプで経腸栄養施行され、在宅で診られていた。胸腹部CTで胆嚢、胆嚢管に結石が散在し、総胆管結石も認めた。検査所見では黄疸、肝腎機能異常、炎症反応高値を認めた。抗生物質により炎症反応の改善を認めたため、第24病日にTGE(GIF-XQ240)下に内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)施行し、砕石術を行い、胆管内結石の排石に成功。【症例2】80歳代、男性。主訴は発熱。以前より脳梗塞後遺症で寝たきりで経鼻栄養、気管切開を受け在宅で診られていた。胸腹部CTで、誤嚥性肺炎、総胆管結石、膵炎を認めた。検査所見でも画像所見を示唆するものであった。その後DICとなり、DIC、急性膵炎の治療を先行させた。その後結石嵌頓が外れ、血液検査所見が改善し、肺炎からも離脱し、第13病日に胃壁4点固定後にDirect法によるPEG施行、引き続き同瘻孔よりGIF-XQ240を挿入しTGE下にEST施行し、砕石術を行い径20mmの混合石の排石に成功。その後PEGボタン留置して終了。【考察】TGE下に砕石術を2例施行でき、1例は一期的にPEG、EST、砕石術までも施行可能であった症例を経験した。4点固定を行うことで胃壁腹壁解離を起こす危険を予防し、内視鏡挿入が可能であり、手技を完遂できた。【結語】ハイリスク群のPEG症例のERCP手技はTGEからのアプローチにより安全に処置可能である。