日本消化器内視鏡学会甲信越支部

34.悪性胆道狭窄に対し超音波内視鏡ガイド下経十二指腸的胆管ドレナージ術(EUS-BD)を施行した1例

信州大学 医学部 消化器内科
丸山 雅史、張 淑美、児玉 亮、尾崎 弥生、高山 真理、浜野 英明、新倉 則和、田中 栄司

 【背景】悪性胆道狭窄に対する内視鏡的胆道ドレナージ(EBD)は広く普及しているが、十二指腸狭窄例、乳頭への腫瘍浸潤による開口部の確認困難例においては経乳頭的アプローチが困難な場合がある。それらの症例に対し近年EUS-FNAを応用した治療法の一つである超音波内視鏡ガイド下胆道ドレナージ術(EUS-BD)の報告が散見される。今回、悪性腫瘍転移に伴う十二指腸・下部胆管高度狭窄例に対しEUS-BDを施行した1例を経験したので報告する。【症例】49歳女性。2006年に卵巣癌(stageIV)と診断され化学療法がなされた。2008年5月末に膵頭部、十二指腸周囲播種に伴う下部胆管狭窄による閉塞性黄疸にて紹介受診した。経乳頭的アプローチを試みるも十二指腸狭窄により乳頭に到達不可能であった。腹水大量貯留のためPTBDも困難であったことから十分なインフォームド・コンセントの上でEUS-BDを施行した。電子コンベックス型超音波内視鏡(GF-UCT2000, Olympus)を用いECHOTIP19G穿刺針(Olympus)にて十二指腸球部から穿刺し、0.035inchのガイドワイヤーを留置後、先端が4Frの拡張用ダイレーター(Soehendra, Cook)の挿入を試みるも不成功であった。次に拡張径4mmの胆管拡張用バルーン(B-400N-0420, Olympus)の挿入を試み、弱冠の抵抗を認めたが挿入可能であった。バルーン拡張術後にフラップ付きストレート型ステント7Fr7cm(Olympus)を留置し手技を終了した。処置前のTbilは11.85mg/dLであり処置後24日目には1.03mg/dLまで低下したが、処置後26日目に原病死された。【まとめ】EUS-BDはEBDや経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)困難例に対する有効な減黄法となりうる。しかし、穿刺可能な超音波内視鏡装置及びEUS関連の手技の習熟が必須であること、また、EUS-BD後には十二指腸狭窄に対するステント留置が困難になるなど課題も多い。これまでの報告を参考にその安全性、有用性について検討する。