日本消化器内視鏡学会甲信越支部

30.卵殻状の石灰化を伴ったsolid-pseudopapillary tumorの1例

佐久総合病院 外科
長谷川 健、大久保 浩毅
同胃腸科
比佐 岳史、宮田 佳典、小山 恒男
同内科
高松 正人、古武 昌幸

 【症例】30歳代、男性。平成19年、腰痛にて近医を受診し、腹部CTにて膵腫瘤を指摘され当院紹介となった。USでは膵体部に内部に石灰化を伴う径25mm大の低エコ-腫瘤を認めた。EUSでは境界比較的明瞭、辺縁整な径28x25mm大の低エコ−腫瘤を認めた。腫瘍内部には一部脈管様構造物を認めた。腹部CTでは腫瘍内に卵殻状の石灰化を認め、造影CTでは腫瘍は不均一に淡い造影効果を示した。膵管造影では腫瘍に一致して膵体部主膵管に狭小化を認めた。以上より、solid-pseudopapillary tumor(以下SPT)と診断し脾温存膵体尾部切除術を施行した。病理組織学的には、腫瘍は小型の核を有する、偽乳頭状の配列を認め、SPTと診断した。腫瘍細胞は石灰化を包み込むように、石灰化の内外に存在した。膵実質と腫瘍の境界は、腫瘍が浸潤様に膵実質に分け入る様に進展していた。背側の膵周囲組織とは、被膜を有しており境界は明瞭であった。

【考察】SPTに関して、男性例、嚢胞成分の欠如する充実性腫瘤としての報告例は稀である。本例のSPTに関して、組織学的に腫瘍と膵実質は、膵実質に浸潤様に進展しているため腫瘍の核出術は困難であり、また、膵外組織とは被膜が存在し剥離は可能と思われた。