日本消化器内視鏡学会甲信越支部

28.膵石治療後膵管鏡にて診断された膵管内乳頭粘液性腺腫(IPMA)の1例

新潟
中村 厚夫、佐藤 聡史、八木 一芳、関根 厚雄
新潟県立吉田病院 外科
岡本 春彦、田宮 洋一

 症例は59歳男性、体重減少、口渇を主訴に2008年3月27日当科受診、糖尿病と診断され入院。血糖748mg/dl、HbA1c18%でインスリン治療を行った。腹部エコーで膵管の拡張を認め、腹部CTでも膵管の拡張と膵頭部に膵石を認めた。ERCPで、乳頭開口部は開大し粘液の排出を認め膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMT)様の開口部であった。膵頭部主膵管は粘液と思われる透亮像を認め、その尾側は膵石のため膵管は描出されずガイドワイヤーも結石より尾側に入らなかった。5月9日ESWLを1回行い膵石はほとんど消失した。その後のERCPでは膵管を閉塞する膵石は消失し、尾側の膵管が描出されるようになったが膵頭部に透亮像を認めるためIDUS施行、膵頭部主膵管に6mm大の腫瘤性病変が疑われた。このときの膵液細胞診はClassIII、IPMAを疑い5月28日経口膵管鏡を行った。膵頭部主膵管には白色調のイクラ様粘膜を認め、分枝膵管には点状の血管を認めるイクラ状粘膜が観察された。血管はNBIでより明瞭に観察された。混合型IPMA以上と診断し外科切除の方針とした。6月9日当院外科にて幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を行った。病理診断はcancerは認めずintraductal papillary-mucinous adenoma(IPMA)を主体とし一部はatypical hyperplasiaだった。膵管周囲は線維化を認めchronic pancreatitsを示していた。膵管鏡により診断がより確実となった症例を経験したので報告する。