日本消化器内視鏡学会甲信越支部

27.急性膵炎にて発症し特異な膵管像を呈した主膵管型膵管内乳頭状粘液性腫瘍の1例

飯田市立病院 消化器内科
持塚 章芳、岡庭 信司、中村 喜行、金子 靖典
飯田市立病院 消化器外科
秋田 倫幸、平栗 学、堀米 直人、金子 源吾
飯田市立病院 病理診断科
伊藤 信夫

  症例は80代、女性、2007年10月に心窩部痛が数日持続するため近医を受診し、血液検査にてアミラーゼの上昇を認めたことから、急性膵炎の診断にて当院消化器内科に紹介となった。腹部CT検査では、膵体尾部は60mm大に腫大しており、主膵管と連続する嚢胞性腫瘤像を呈していた。腹部エコー検査では体尾部主膵管内に高エコーの乳頭状隆起性病変と粘液がみられ、超音波内視鏡検査では膵実質への明らかな浸潤を認めなかった。内視鏡では、乳頭開口部の開大や粘液の流出はなく、管腔内超音波検査では、隆起性病変は体尾部膵管のみに存在し、頭部主膵管内にはみられなかった。MRCPでは主膵管が頭体部移行部から尾側が嚢胞状に拡張し内部に複数の低信号を呈する腫瘤像を認めた。いずれの画像検査でも頭体部移行部に閉塞機転を認めなかった。膵液細胞診は陰性であったが、画像検査から膵体尾部に限局した主膵管型膵管内乳頭状粘液性腫瘍(以下IPMN)と診断し、明らかな転移と浸潤を認めないことから、膵体尾部脾摘術を施行した。病理学的にはほぼ全体が腺腫から構成されており、ごく一部に癌を伴うIPMNと診断した。膵切離断端、剥離面は陰性、進行度はpTis,pN0,cM0, fStage 0であった。  今回我々は、急性膵炎を契機に発見され、体尾部主膵管のみ拡張した主膵管型IPMNの1例を経験したので報告する。