【目的】急性膵炎患者の原因検索における超音波内視鏡(EUS)の有用性を明らかにする。
【対象】2000年4月〜2007年9月の間にCTにて急性膵炎と診断し、少なくとも12ヶ月以上の経過観察を施行した80例。膵管癌に伴う閉塞性膵炎例は除外した。
【方法】CTにより胆管結石や腫瘍性病変などの急性膵炎の原因検索を行い、胆管結石を指摘された25例に対しては引き続き内視鏡治療を施行した。明らかな原因を指摘できなかった55例に対してEUSを施行し、その診断能をCTとretrospectiveに比較検討した。
【結果】急性膵炎の原因は、1)胆管結石(胆泥を含む)41例、2)アルコール21例、3)膵管内腫瘍3例、4)自然排石疑い4例、5)不明11例の5群に分類された。CT診断のみでは、胆管結石16例と膵管内腫瘍の2例が指摘できておらず、正診率は77.5%であった。EUSではCTにて指摘できなかった胆管結石と膵管内腫瘍の全例が診断可能であり、正診率100%とCTに比較して有意(p<0.0005)に優れていた。さらにEUSでは、アルコール性膵炎と診断した21例中7例に慢性膵炎の所見(点状高エコー、索状高エコー、分葉状エコー)を指摘でき、慢性膵炎の急性増悪と診断可能であった。
【結論】EUSは、急性膵炎の原因となる胆管結石や膵管内腫瘍の拾い上げのみならず慢性膵炎の急性増悪例の診断にも有用である。胆管結石などの原因が明らかでない急性膵炎例に対してはEUSによる原因検索を行うべきである。