日本消化器内視鏡学会甲信越支部

25.短期間に画像変化を来たした自己免疫性膵炎の一例

諏訪赤十字病院 消化器科
山本 高照、望月 太郎、武井 秀樹、進士 明宏、沖山 洋、太田 裕志、武川 建二、山村 伸吉
辰野総合病院 内科
漆原 昭彦
諏訪赤十字病院 病理部
中村 智次

 症例は60歳男性。糖尿病にて経口糖尿病薬を内服。以前よりインスリン療法の導入の必要性が示唆されていた。平成20年4月下旬から上腹部及び背部痛を自覚したため、4月30日に前医を受診した。肝胆道系酵素は正常範囲内で炎症反応も陰性、腹部CTでも膵腫大等の膵炎の所見は認めなかった。5月9日に始めて血清アミラーゼ値の上昇を伴う腹痛が出現したため前医入院した。腹部CTでは、膵全体のびまん性腫大が認められたが、膵実質の内部不均一性や液体貯留は認めなかった。入院後アミラーゼは正常化。6月になり肝機能異常と腹部超音波検査で胆管拡張が認められたため閉塞性黄疸の精査目的に6月4日当院転院。ERCPにて下部胆管の締め付け狭窄及び頭側膵管の狭小化と尾側膵管の拡張像を認めた。CA19-9は上昇傾向を認め、ENBD留置後も更に上昇し828まで上昇した。CT上はさらにびまん性に膵腫大し、周囲の敷石状構造は消失した。血清IgG4の高値と胆管生検でIgG4細胞陽性形質細胞が認められたため、自己免疫性膵炎と診断し、プレドニゾロン(以下PSL)を 30mg/日より開始した。CA19-9はPSL開始後低下した。7月 腹部CTでは、膵の腫大はほぼ正常化し、著明な改善が見られた。ERCPでも、下部胆管の狭小化、膵管の広狭不整も消失し、ERBDを抜去した。PSL 25mgに減量し退院となった。一ヶ月足らずの間に、画像的にほぼ正常像からびまん性膵腫大へといたった経過を追えた貴重な症例と考え報告する。