日本消化器内視鏡学会甲信越支部

24.閉塞性黄疸で発症し、経過中に後腹膜線維症を合併し、IgG4の陽性化を認めた自己免疫性膵炎の1例

山梨大学 医学部 第1内科
深澤 佳満、高野 伸一、松井 啓、山口 達也、植竹 智義、大塚 博之、大高 雅彦、佐藤 公、榎本 信幸

  症例は75歳女性。既往歴は高血圧、高脂血症で内服加療中。家族歴、患者背景に特記事項なし。  2005年11月末より心窩部違和感があり、12月2日より灰白色便、尿濃染を認めていた。12月7日に当科受診。閉塞性黄疸の診断で2005年12月8日第1回入院.精査の結果、膵頭部の腫大を認め、同部で総胆管は狭小化していた。CA19-9は66 IU/lと上昇していたが、IgG4は陰性であり、臨床的には自己免疫性膵炎と膵癌の鑑別が問題となった。経過中に腫瘍マーカーの正常化が見られたため、自己免疫性膵炎と診断し、PSLを導入し膵腫大の改善が見られた。外来経過観察中2006年10月よりCT上後腹膜線維症を認め、経過とともに増悪傾向が見られた。両腎盂の拡張もみとめられた。IgG4も後腹膜線維症の増悪とともに陽性化し、上昇した。2008年5月20日第2回入院。入院後PSLを導入し、2週間後には大動脈周囲の後腹膜線維症は縮小傾向を認め、腎盂拡張も軽快し、IgG4も低下した。 自己免疫性膵炎は本症例のように後腹膜線維症をはじめとする膵外病変を合併することが多く、血清IgG4値は膵炎のみならず全身の炎症の活動性を反映していることが示唆される。また、後腹膜線維症はその増悪により腎不全などの病態を引き起こすことがあり、本疾患を診療するうえでは注意すべき合併症と考えられた。