日本消化器内視鏡学会甲信越支部

23.IgG4関連十二指腸乳頭炎の一例

新潟大学医歯学総合病院 光学医療診療部
塩路 和彦、成澤 林太郎
新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野
五十嵐 聡、竹越 聡、有賀 諭生、冨樫 忠之、窪田 智之、川合 弘一、鈴木 健司、青柳 豊

  自己免疫性膵炎では十二指腸乳頭部の腫大を伴い、生検にてIgG4免疫染色陽性の形質細胞浸潤を認めることがあり、自己免疫性膵炎診断の一助にもなっている。血清IgG4は自己免疫性膵炎に特異的なマーカーではあるが、近年膵病変を伴わない血清IgG4陽性の胆管炎、耳下腺炎、後腹膜線維症などの報告もあり、IgG4関連硬化性病変という概念も提唱されている。 今回我々は自己免疫性膵炎を伴わないIgG4関連十二指腸乳頭炎と考えられる症例を経験したので報告する。 症例は70歳代の男性。胸焼けを主訴にEGD施行したところ、胃癌と乳頭部の腫大を指摘され当科紹介となった。側視鏡にて乳頭部は軽度の発赤と腫大を認め、EUSでは10mm大の低エコー腫瘤として描出された。内視鏡所見からは乳頭部癌を疑ったが、乳頭部の生検では悪性所見を認めず、リンパ濾胞の過形成を認めた。血清IgG4を測定したところ207mg/dlと高値であり、生検組織のIgG4免疫染色でも多数の陽性細胞を認めた。ERCPも施行し胆管造影は可能であったが、膵管造影はできなかった。腹部CTで膵腫大を認めず、乳頭部の生検を再度行うも悪性所見はなく、前回と同様の所見であった。IgG4関連の十二指腸乳頭炎が疑われステロイド投与も考慮したが、胃癌に対し胃全摘術が予定されており、術後は乳頭部の観察が困難と予想されたため、診断目的に内視鏡的乳頭部切除術を施行した。切除後ERPが可能となったが、膵管狭細像は認めなかった。 この症例を膵病変を伴わないIgG4関連十二指腸乳頭炎としてよいかどうかについても意見があると思われるが、興味深い症例と考え報告する。