日本消化器内視鏡学会甲信越支部

21.間膜軸性胃軸捻転の2例

新潟市民病院 消化器科
金子 正儀、古川 浩一、河久 順志、濱 勇、横尾 健、相場 恒男、米山 靖、和栗 暢生、杉村 一仁、五十嵐 健太郎、月岡 恵

 時に重症化を呈することもある間膜軸性胃軸捻転による急性腹症で受診する患者数は決して多いわけではないが、本症についての特徴的な所見を認識していれば診断はむしろ容易である。それぞれ背景とする原因の異なる間膜軸性軸捻転の2例を経験したので文献的考察を加え報告する。【症例1】57歳、男性。52歳時に肺癌にて左肺全摘術施行。夕食後腹痛出現し、翌日近医受診。痛み止めにて一時軽快し帰宅。その後、腹痛再燃し、当院救急外来受診。腹部単純レントゲン検査にて左横隔膜の挙上と大量の胃泡を認め、胃軸捻転疑いにて当科入院。経鼻胃管が挿入可能であり、減圧のみにて軽快。上部消化管造影所見より間膜軸性胃軸捻転と診断。捻転の整復および再発予防の手術は原疾患と関連もあり実施せず、保存的に対応することとなった。5年後に原疾患永眠されるまで捻転による消化管の閉塞症状は出現しなかった。【症例2】83歳、女性。重度の認知症がありショートステイを繰り返していた。81歳時より2〜3ヶ月ごとに突然の嘔吐、続発する吐血、黒色便の症状を呈し、近医A内科、B病院消化器科、C病院内科で上部消化管内視鏡検査を繰り返し実施するも、スコープは幽門輪を超えず、十二指腸までの観察が不十分であったが観察範囲には出血源を認めなかった。本年5月26日嘔吐、吐血し、C病院入院。6月6日精査目的に当科転院。当科ではMスコープを使用し十二指腸までの観察を実施。十二指腸にも出血源のないことを確認した。同時に実施した透視所見より間膜軸性胃軸捻転およびマロリーワイス症候群と診断。成因としては比較的大きな食道傍横隔膜裂孔ヘルニアが関与しているものと考えられた。