日本消化器内視鏡学会甲信越支部

20.柿胃石がコーラにより溶解する様子を内視鏡視下で観察しえた1例

新潟県立新発田病院 内科
松澤 純、本間 照、早川 雅人、田中 由佳里、杉山 幹也、夏井 正明、姉崎 一弥、渡邉 雅史

 【はじめに】胃石は胃潰瘍や腸閉塞の原因になりうるため、何らかの方法で除去しなければならない。我が国でもっとも多く遭遇する柿胃石は、他の成分の胃石に比べ硬いとされており、そのためこれまで一般的に試みられている内視鏡的な砕石術に難渋することが少なくない。近年、柿胃石に対する溶解療法としてコーラを用いた方法が奏功するとの報告を散見する。それらは、経鼻チューブ下に多量のコーラを注入する方法や数十日間毎日コーラを飲み続ける方法であり、胃石が崩壊していく様子は観察しえず、また消失を確認するまで数日間を要するものである。今回われわれは、柿胃石がコーラにより数十分で溶解し崩壊する様子を内視鏡視下で観察しえた1例を経験したので、これを報告する。【症例】79歳 男性〔既往歴〕脳梗塞で抗血小板薬を内服。〔食嗜好〕若い頃より柿を好んで食べ、柿の季節以外にも干し柿や冷凍保存した柿を食べる習慣があった。〔現病歴〕平成20年6月3日右下腿動脈硬化性壊疽の診断で当院整形外科にて右下腿切断術を施行。術後黒色便の排泄および貧血の進行を認めた。同月18日胃内視鏡検査を施行したところ、胃内に径約25mm大の胃石を1個認めた。また胃前庭部後壁に潰瘍を認めた。【治療過程】胃石に対し内視鏡下に直接コーラを散布し、左側臥位のまま胃体部大弯側に貯留したコーラ内に胃石を約5分間沈めた。この操作を3回繰り返し、胃石の変形と縮小を確認した。その後スネアを用いて切石を試みたところ、胃石は脆弱化しており最大径約5mm大まで切り刻むことが可能となり、翌週胃石の消失を確認した。【結語】少量のコーラを用いて、柿胃石が溶解し崩壊するまでの様子を内視鏡視下で観察しえた。すべての胃石に対しコーラによる溶解療法が本例のように有効性が高いかどうかは今後検討の余地があるが、これまで試みられてきた内視鏡下の機械的砕石法に比べ、コーラによる溶解療法は極めて安全かつ簡便であり、医療経済的にも大いに期待できる方法であると考えられた。