日本消化器内視鏡学会甲信越支部

18.NBI拡大観察による検討を施行し得た好酸球性胃腸炎の1例

佐久総合病院 胃腸科
柴垣 広太郎、小山 恒男、友利 彰寿、堀田 欣一、高橋 亜希子、北村 陽子、船川 慶太、三池 忠、草場 亜矢子、西山 祐二、宮田 佳典

 症例は50歳代男性、2007年12月から気管支喘息で通院加療中であった。2008年5月、上腹部間欠痛を主訴に当院を受診した。上腹部に軽度の圧痛を認めるのみで、血液検査でも明らかな異常は確認されなかった。腹部USで異常所見は無く、CTで十二指腸下行脚の壁肥厚を、上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部・下行脚に襞肥厚と発赤を認め、十二指腸炎と診断された。H2 blockerの投与で腹痛は改善せず、1週間後に当院に入院した。腹痛は速やかに軽減し、2日で退院したが再燃し、10日後に再入院となった。入院時の血液検査では好酸球増多(35.2%)、低蛋白血症、高IgE血症を認め、MPO-ANCAは陰性であった。腹部US及びCTで壁肥厚は胃前庭部・十二指腸・上部小腸に拡がっていた。上部消化管内視鏡検査では胃前庭部に明らかな異常を認めなかったが、十二指腸の病変は球部から水平脚まで拡がり、不整な襞壁肥厚と境界不明瞭な発赤をびまん性に認め、介在粘膜は褪色していた。発赤部のNBI拡大観察で大小不同の腫大したvilliを認めたが、形態不整は軽度であった。褪色部のvilliは萎縮し、走行不整と口径不同に乏しい微細血管が透見された。発赤部から生検し、粘膜固有層に好酸球を含む高度の炎症細胞浸潤と充血・粘膜内出血を認めたが浮腫は無く、発赤は充血と粘膜内出血を反映したものと考えられた。寄生虫感染の所見や血管炎症状を認めず、好酸球性胃腸炎と診断し、Predonizolon 20mg/dayを投与した。3-4日で腹痛は改善、好酸球数も減少し(5.8%)、2週間で退院した。好酸球性胃腸炎の十二指腸・小腸の主な内視鏡所見は、粘膜の浮腫・発赤・襞壁の腫大とされるが、NBI拡大観察所見は過去に報告がなかった。十二指腸の発赤部には、拡大観察で大小不同だが形態不整の乏しい腫大したvilliを認めたが、生検にてこの原因は浮腫では無く、好酸球を含む高度細胞浸潤である事が判明した。 また、本例では内視鏡的に確認された罹患範囲は腹部US,CTで確認された壁肥厚の範囲より狭かった。好酸球性胃腸炎では好酸球浸潤層が部位により異なることも報告されており、病変範囲の確認には内視鏡検査と腹部US・CTの併用が重要と考えられた。