日本消化器内視鏡学会甲信越支部

17.メシル酸イマチニブによる術前療法が有用であった胃GISTの1例

信州大学 医学部 付属病院 消化器外科
小松 大介、小出 直彦、平賀 理佐子、村中 太、荻原 裕明、石曽根 聡、宮川 眞一
長野中央病院 内科
冨田 明彦、小島 英吾
信州大学 医学部 付属病院 中央検査部
浅野 功治、佐野 健司

 【緒言】Gastrointestinal stromal tumor(以下GIST)に対するメシル酸イマチニブ(以下グリベック)のneoajuvant therapyは未だコンセンサスを得るに至っていないが,胃原発のGISTにグリベックを術前に投与し,その有効性を示唆する1例を経験した.【症例】患者は68歳,女性.左側腹部腫瘤を自覚し,近医を受診した.腹部CTでは左側腹部に最大径約21cmの腫瘍を認めた.上部消化管内視鏡検査では胃体上部大弯側に粘膜下腫瘍を認め,同部位からボーリング生検を行なわれ,腫瘍組織の免疫染色にてc-kit陽性,CD34陽性,α-SMA陰性,S-100陰性でGISTと診断された.手術目的に当科紹介となったが,腫瘍が大きく隣接臓器への癒着や切除に際しての大量出血が危惧された.このため患者さんと相談し,術前にグリベック(400mg/day)投与を行なった.投与2ヵ月後,食欲不振,貧血,全身浮腫が出現したため内服中止となったが,腹部CTでは腫瘍径は15cmに縮小したため転医となり手術を施行した.開腹所見では肝転移,腹膜播腫を認めず,胃体上部大弯から約15cm大の不整形腫瘤が突出しており,左横隔膜,横行結腸左側,脾臓と線維性に癒着していたが明らかな浸潤はなかった.胃部分切除のみで腫瘍の根治切除が可能であった.切除標本では腫瘍径152x98x87mm,重量680gであった.病理学組織学的には胃の固有筋層から発生したHigh risk群のGISTであったが,腫瘍内部には壊死部分が散在し,治療効果を反映しているものと考えられた.【結語】術前グリベック投与により腫瘍縮小効果が得られた胃GISTの1例を報告した.