日本消化器内視鏡学会甲信越支部

13.当院における転移性胃腫瘍のまとめ

新潟県立がんセンター新潟病院 内科
佐藤 俊大、佐々木 俊哉、船越 和博、本山 展隆、加藤 俊幸

 一般に転移性胃腫瘍はまれな病態であり、何らかの悪性腫瘍を伴った剖検例で1−5%に認められるとされているが、臨床の場で診断される例は少ない。その理由としては、胃が管腔の比較的広い臓器であり閉塞症状が認められにくいことや、自覚症状として認識される食欲不振および上腹部不快感などが原発巣に対する化学療法などの治療による副作用と診断されるためと考えられている。また胃への転移を来す悪性腫瘍として肺癌、乳癌、皮膚悪性黒色腫、食道癌などが報告されている。H4.1.1からH20.8.26の期間において当科で上部消化管内視鏡検査を施行し、転移性胃腫瘍と診断した症例について、内視鏡像を中心にその特徴について検討した。今回の検討で転移性胃腫瘍の原発巣としては肺癌、乳癌などが認められた。内視鏡所見では転移性胃腫瘍は粘膜下腫瘍様の形態を呈することが多いが、乳癌では多発するびらん様所見または4型胃癌様所見を呈することもあり、注意を要すると考えられた。また組織型では低分化癌が多く、HE染色のみでは胃原発の低分化型との鑑別が困難であると考えられ、既往歴の聴取が重要であると考えられた。