【背景と目的】UL合併症例に対するESDは難易度が高いが、その難易度は線維化の程度に左右される。そこでUL合併適応拡大症例の線維化程度をESD前に予測可能か否かを、通常内視鏡とEUS像を用いてretrospectiveに検討した。【対象と方法】2000年1月から2007年12月までの間に当院においてESDを施行した早期胃癌899例960病変中、適応拡大UL(+)群(分化型粘膜内癌、腫瘍長径30mm以下)34例34病変を対象とし、適応内群411例455病変をコントロールとした。組織学的に剥離面に線維または固有筋層の露出を認めた場合をUL-severe(ULs)、露出がなかった場合をUL-mild(ULm)と分類した。また術前の内視鏡所見にて複数点集中または面状陥凹面を認めた群をE-severe群(Es)、認めなかった群をE-mild群(Em)、EUSにて第4層の肥厚を伴う第3層の不明瞭化または途絶のある群をEUS-severe(EUSs)群、これらが無い場合をEUS-mild(EUSm)群に亜分類し、病理所見と対比した。【結果】UL合併34病変中、ULmは15病変、ULsは19病変であった。そのうちEUSによる評価可能であった病変は、ULmは5病変、ULsは12病変であった。ULsの予測において内視鏡所見は感度89%、特異度87%、PPV89%、NPV 87%、EUS所見は感度58%、特異度100%、PPV 100%、NPV50%であった。以上より、内視鏡所見は感度、NPVでEUSより優れており、高度の線維化予測に有用な所見と思われた。一方、EUS所見は感度、NPVで内視鏡に劣るが、特異度、PPVに優れていた。【結語】潰瘍瘢痕の程度予測には内視鏡所見とEUS所見の総合的な判断が有用と思われた。