日本消化器内視鏡学会甲信越支部

10.食道webの1例

新潟市民病院 消化器科
横尾 健、古川 浩一、五十嵐 健太郎、河久 順志、濱 勇、相場 恒男、米山 靖、和栗 暢生、杉村 一仁、月岡 恵

 食道webの1例を経験したので供覧する。症例は38歳、女性。小児期より食事に時間を要する傾向を指摘されていた。10歳代後半に貧血を指摘されていたが、無治療にて経過。20歳代後半より摂食した食物がしばしば喉に詰まることを自覚していたが放置。本年4月に寿司摂食後咽頭つかえ感が増強し、唾液も嚥下困難となり当院救急外来受診。当院耳鼻科に一時入院、喉頭鏡での観察では異常所見を指摘されなかった。退院ののち嚥下障害につき精査目的に当科初診。身体所見としては難治再発性の口角炎と貧血を認め血液検査では高度の鉄欠乏性貧血を呈していた。5月の上部消化管造影検査では頚部食道の狭窄を認め、上部消化管内視鏡検査では切歯列より21cm、食道入口部に狭窄を認め。針穴状の開口部があるもののスコープは通過不能であった。同部の生検では腫瘍性病変や特異的な細胞浸潤、繊維化、沈着物質などは認めなかった。翌日、縦隔気腫が確認されたため当科入院。縦気腫は保存的に改善、消化管造影再検査では偏側性の膜様狭窄が確認された。食道狭窄は以上の所見よりPlummer-Vinson症候群に伴う食道webと診断。食事制限つきながら経口摂食が可能であったことから鉄剤投与し経過観察方針とした。治療開始3ヶ月後では嚥下障害の自覚症状は改善傾向を示し。血液検査では貧血は改善、食道造影もわずかながら狭窄の改善が認められた。本邦において食道webはまれであり文献的考察を加え報告する。