日本消化器内視鏡学会甲信越支部

7.重症急性食道粘膜病変の1例

長野県立木曽病院 内科
高橋 俊晴、木村 岳史、小松 健一、飯島 章博
長野県立木曽病院 外科
小山 佳紀、大町 俊哉、久米田 茂喜

【症例】81歳 男性

【主訴】食欲不振

【既往歴】胃癌(胃亜全摘:80歳)、胆石症(胆嚢摘出術:80歳)、腸閉塞(80歳)

【経過】2007年8月13日胃癌:adenocarcinoma, type4, por2≫por1=tub1, ss, ly3, v1, N2, stage3A)にて胃亜全摘術(distal gastrectomy)施行し、その後外来通院となっていた。

平成20年6月15日より食欲不振を認めたため19日外来を受診、炎症反応高値、尿混濁を認め尿路感染症として入院となった。抗生剤(CMZ 2g/day)静注を開始したが、炎症反応は陰性化せず、血液検査で貧血の進行も認めた。食欲不振の持続もあるため精査目的で6月26日に上部消化管内視鏡検査を施行した。上部から下部食道まで白斑と褐色粘膜を認めたが、この時点では出血を認めなかった。胆汁の食道内への逆流を認めたため逆流性食道炎としてPPI投与による治療を開始した。7月1日より吐血、タール便を認めたため2日に上部消化管内視鏡再検査したところ、上部から下部食道まで広範に粘膜の脱落を伴う出血性食道炎を認めた。内視鏡的止血は不能であり、PPI継続とアドレノクロム静注等を行ったが止血しえず、15日に死亡した。

【考察】今回の症例では、急速に高度の粘膜障害・脱落が起こり、内視鏡的治療は不能であった。さらに薬物療法が奏功せず、救命し得なかった。非常に稀な重症急性食道粘膜病変の1例を経験したので報告する。