日本消化器内視鏡学会甲信越支部

6.深達度MM食道内分泌細胞癌(小細胞型)の1例

新潟大学医歯学総合病院 光学医療診療部
竹内 学、成澤 林太郎
新潟大学医歯学総合病院 第三内科
高橋 弘道、小林 正明、青木 洋平、矢野 雅彦、佐藤 明人、橋本 哲、大越 章吾、青柳 豊
新潟大学大学院医歯学総合研究科 分子・診断病理学分野
味岡 洋一

 食道内分泌細胞癌は比較的稀な疾患で、そのほとんどが粘膜下層以深の浸潤で発見され、予後は極めて不良である。今回われわれは、深達度pT1a-MM(m3)の最大径4mmの食道内分泌細胞癌(小細胞型)に対し、ESDによる一括完全切除を行い、その後化学療法を施行した症例を報告する。症例は60歳代男性。2003年他院にて胸部中部食道の広範な早期食道癌に対し化学放射線療法を施行し、以後CR。その後の経過観察EGDで頚部および胸部上部食道に早期食道癌2病変を認め、内視鏡治療目的に2008年4月当科紹介。術前EGDにて上記病変以外に切歯より35cmの胸部下部食道右壁(照射野外)に径5mm大の小発赤隆起を認めた。立ち上がりはなだらかで表層は非腫瘍性扁平上皮に覆われ、やや硬さを有していた。NBI拡大観察では隆起部分に一致し、やや拡張した血管がreticular patternを呈していた(有馬分類type4R)。またヨード染色では明らかな不染帯は呈さず、同部からの生検で、Keratin、CD56、Chromogranin A陽性のendocrine cell carcinoma(small cell type)と診断された。EUSでは、第2層を主座に低エコー腫瘤として認識でき、ややSM層を圧排し、深達度MMからSM1と診断。全身CTでは明らかな転移は認めず、腫瘍マーカーも陰性であった。患者に十分なIC後、ESDを行い、化学療法を施行する方針とした。病理診断はEndocrine cell carcinoma、pT1a-MM(m3)、pHM0、pVM0、ly0、v0、0-IIa、4×3mm、免疫染色ではSynaptophygin、CD56、NSE陽性であった。術後より化学療法(standard FP)施行し、現在まで再発は認めていない。過去に深達度MMで発見された食道内分泌細胞癌の報告はなく、極めて稀な症例であると同時に、予後も明らかではなく今後化学療法を継続し、十分な経過観察が重要と考える。