進行食道癌化学放射線療法施行10年後に発生したverrucous carcinomaの1例長野市民病院消化器科1)、同外科2)、同病理3)彦坂 吉興、長谷部修、須澤 兼一、立岩 伸之、越知 泰英1)、宗像 康博2)、保坂典子3)症例は70才代男性。H10年5月〜7月当院消化器科にて切除不能進行食道癌(Mt,切歯より28〜35cm、2型、中分化型扁平上皮癌)に対し化学放射線療法(FP療法2クール+radiation 60Gy) 施行。H10年11月右頸部リンパ節転移が出現し、頸部radiation 30Gyを追加。その後の上部消化管内視鏡検査(EGD)・胸部CTで腫瘍の消失を認め、CRと判定された。その後毎年定期検査を施行するも再発は認めなかった。H20年3月頃より食道違和感が出現し3月27日EGD施行。Mt(切歯より35cm)右壁〜後壁を中心に管腔の2/3周を占める隆起性病変を認めた。表面は厚い白苔を有し、一部粘膜下腫瘍的発育を有する疣状の外観を呈し、生検では角化を伴う高分化型扁平上皮癌だった。胸腹部CTでは明らかなリンパ節や遠隔転移を認めず、H20年5月19日胸腹腔鏡補助下食道亜全摘術を施行した。病理組織学的には角化を伴う扁平上皮癌が著明な乳頭状増殖を伴って下層へ圧排性浸潤を示しており、肉眼形態、組織形態からverrucous carcinomaと診断された。(Mt、1型、70×35mm、well differentiated SCC (verrucous carcinoma)、INFα、pT3(pAd)、 ie(-)、pIM0、ly1、v0、pN0、StageII)。verrucous carcinoma (VC)は口腔領域に多いが食道原発は稀であり、現在までに20例の報告があるのみである。本例は10年前に進行食道癌と診断され、化学放射線療法によりCRを持続していたにもかかわらず、わずか1年3ヶ月間に進行癌の発生を認めた。ほぼ同部位に発生していることから臨床経過・組織型からは遺残再発の可能性も否定できないが、異時性多発の可能性が高い。VCは発育が緩徐で転移が少ないと言われているが、本例は発育が速く、極めて稀な症例と考えられ報告する。