日本消化器内視鏡学会甲信越支部

4.肺腺癌切除3年後に広範な食道転移をきたした1例

新潟県立がんセンター新潟病院 内科
清野 豊、加藤 俊幸、佐藤 俊大、佐々木 俊哉、船越 和博、本山 展隆

 【症例】患者は76歳の男性。3年前の2005年2月に左肺腺癌の切除を受け、pT1N0M0 IAであった。

 術後の経過は良好で、胸部CTでも異常を認めなかったが、2008年6月上旬から食道の通過障害を自覚するようになり、下旬には嚥下困難となったため近医を受診し入院した。入院後の上部消化管内視鏡検査では中部と下部食道の狭窄から食道癌が疑われ、生検では腺癌と診断された。ED栄養を開始するとともに、7月中旬に当科へ転院した。入院時の血清CEA 1.8、SCC 0.7、TPA 73であった。内視鏡検査ではGIF-XP260(外径5mm)が通過したので、Q260(外径9.2mm)に代えた。切歯列から26cmの食道には顆粒状から小結節の集族が、34cmと40cmには顆粒と軽度陥凹の混在した病変の多発を認め、ルゴール染色では地図状の不染帯が認められた。生検では各病変とも粘膜下を中心に低分化な腺癌の浸潤とリンパ管侵襲が認められた。免疫染色を追加し、CK7(+),CK20(-),TTF-1(-)であったことから、肺腺癌の食道壁内への転移と診断された。肺癌の術後3年目の再発が、食道転移として生じた稀な症例である。

【結論】肺癌の進行による食道狭窄はときにみられるが、食道壁内への転移は少ない。過去10年間での食道における転移性腫瘍29例のうちでは胃癌が24例と最も多く、肺癌は3例にすぎない。