日本消化器内視鏡学会甲信越支部

31.横行結腸の区域性病変で発見された潰瘍性大腸炎の1例

下越病院 消化器科
入月 聡、原田 学、河内 邦裕、畠山 眞、大山 慎一、山川 良一
新潟大学大学院医歯学総合研究科 分子・診断病理学分野
味岡 洋一

【はじめに】潰瘍性大腸炎(以下UC)は大腸粘膜を主座とし、原則的には直腸に始まり口側に広がるびまん性非特異的炎症とされる。今回我々は横行結腸の区域性病変で発見され、その後直腸に病変が出現した非定型的な経過をとったUCと思われる症例を経験したので報告する。

【症例】症例は60歳代の男性で、2002年より高血圧、心房細動、糖尿病にて当院に通院中であった。2005年9月注腸造影検査施行し、横行結腸に4mmのポリープを指摘された。2006年9月注腸造影を再検したところ、同部位に50mmにわたり小隆起が密集した所見を認めた。同月、下部消化管内視鏡検査(以下TCF)施行し、横行結腸中央に全周性に発赤、顆粒状の易出血性の病変を認めた。病理組織所見ではびまん性に高度の慢性炎症細胞浸潤があり、陰窩炎、陰窩膿瘍、びらん形成を認めた。陰窩構造にもやや不整があり、再燃性(または持続性)活動性炎症と思われた。肉芽腫は認めず。びまん性炎症所見と再燃性炎症からはUCが考えられるが、炎症の程度に比して陰窩破壊や粘膜傷害が軽度であった。
メサラジン内服を開始し、同年12月、再度、TCFを行った。横行結腸に全周性の多発する結節性病変を認めた。一部に発赤を認めるが、明らかなびらん、潰瘍は認めず。病理組織学所見ではUCの炎症性ポリポーシスが最も疑われた。
2007年1月、再度TCFを行い、直腸Rbに瘢痕を認め、横行結腸の病変はほぼ瘢痕化していた。病理組織所見では慢性炎症細胞浸潤と好酸球浸潤を認めた。回腸末端、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸はほぼ異常なかった。
以上より横行結腸に区域性に発生した非定型的UCと診断した。以降メサラジン内服にて外来管理を行っていた。
その後2008年1月に行ったTCFでは横行結腸の炎症性ポリポーシスに加え、直腸Ra-Rbにこれまでは見られなかったびらん面を認め、病理組織所見ではリンパ球、形質細胞を主体としたびまん性の炎症細胞浸潤および杯細胞の減少を認め、UCに矛盾しない所見であった。

【考察】UCの3.8%は区域性大腸炎で始まり、経過中に70%の症例で直腸も罹患したとの報告がある。今回の症例も横行結腸より区域性に始まり、経過中に直腸病変が見られた。内視鏡所見、病理組織所見の経過に文献的考察を加え報告する。