日本消化器内視鏡学会甲信越支部

29.静脈硬化性大腸炎の一例

厚生連長岡中央綜合病院消化器病センター内科
戸枝路子、熊木大輔、渡辺庄治、佐藤知巳、波田野 徹、富所 隆、吉川 明

今回我々は静脈硬化性大腸炎の一例を経験したので、報告する。症例は54歳女性で、基礎疾患はない。平成20年1月初旬より右側腹部痛を認め、一旦軽快していたが、2月より再び腹痛の増悪あり、精査のため入院となった。腹部CTで上行結腸〜下行結腸にわたる壁肥厚と石灰化を認め、注腸検査では上行結腸〜下行結腸にわたり拇指圧痕像を認めた。大腸内視鏡検査では上行結腸〜下行結腸にかけ、潰瘍やびらんが散在し、血管透見像が消失、暗青色調の粘膜を呈していた。生検標本の病理所見では、粘膜固有層に好酸性の膠原繊維の増生を認めた。以上より、静脈硬化性大腸炎と診断した。絶食・補液による保存的治療にて症状は改善し、現在外来で経過観察中であるが、症状の増悪を認めていない。しかし今後も慎重な経過観察が必要であると思われた。本症は稀な疾患とされており、特徴的な臨床像、画像検査所見を中心に若干の文献的考察を加えて報告する。